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現代歌人シリーズ33
『青い舌』山崎聡子

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作品概要

舌だしてわらう子供を夕暮れに追いつかれないように隠した

書影「青い舌」子供との時間のなかに前世のような記憶の翳がさす。

いつか、どこかで、わたしは立っていた

2021年7月刊行


【自選5首】

君のべろが煙ったように白かったセブンティーンアイスクリーム前

西瓜食べ水瓜を食べわたくしが前世で濡らしてしまった床よ

蟻に水やさしくかけている秋の真顔がわたしに似ている子供

ヒメジョオンの汁でつくったマニキュアでにぶく光っていた爪の先

遮断機の向こうに立って生きてない人の顔して笑ってみせて

仕様

定価 本体2,100円(税別)
出版社 書肆侃侃房(しょしかんかんぼう)
発売日 2021/7/10
版型 四六判変形/並製
総ページ数 160ページ
ISBN 978-4-86385-470-3 C0092
購入方法 全国の書店で販売中。
紀伊國屋書店ウェブストア、Amazon等でも購入できます。詳しくは
書肆侃侃房公式サイトをご覧ください。

装幀:花山周子



あとがき

 短歌を書くようになってから19年が経った。それなのに、私には短歌が実際のところなんなのか全然わからないし、短歌が本当に自分に馴染んでいるのかさえ自信がない。それでも、短歌を書いてきたことで思いがけず流れた濃密な時間を、振り返ってうれしく思う。

 思い返すと、子供の頃には怖いものがいっぱいあった。近所の釣具屋で飼われていた真っ黒な犬が、友達が私に気づかれないように向けてくるすれすれの悪意が、夕方の薄闇に透ける濁った雲が、祖母の家のガラス窓に映る人の顏の生々しさが、ぜんぶがぜんぶ怖かった。けれど、いまは怖いものなんて少ししかなくて、私は四歳になる娘の前でぱちん、と寝室の電気を消す。
 暗闇のなか、娘が覚えたての英語で、あいらびゅーまま、とつぶやくのを聞くと、ここがひどく遠くて、淋しくて、くらくらする。

**

 家族と友人に。前歌集から引き続き装幀を担当してくれた花山周子さんに。そして、出版の機会をくださった書肆侃侃房の編集部の皆さまに、心から感謝を申し上げます。

 2021年4月 自宅キッチンにて

山崎聡子


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